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職人を学ぶ
伊藤広之
 伝統とは新しいことを取り込んで進化させてきたから、数百年残っている。守ってきて残ったのではなく、挑戦してきたから残れたのだ。

 漆塗り職人の伊藤広之は伝統の世界ではバカにされる「吹き付け技法」(エアガンを使って塗料を吹き付けて塗る技法)を極めた職人だ。仏壇専門の塗り職人は家具のような大きな部品から、彫刻の細かな部品まで多種多様のパーツを塗らなければいけない。常に創意工夫が必要とせれる特殊な業種である。吹き付け技法で唯一のネックは本漆を塗るのが出来なかった。(吹き付け用の精製漆という漆成分の入った塗料は存在する)試行錯誤を繰り返してエアガンで本漆を塗る技術を獲得した。その結果従来塗ることが出来なかった複雑な形状の物に漆を塗布する事ができるようになった。

 その技法でウルトラマン、ミッキーマウスなどのフィギュアに漆を塗布した製品を発表すると全て即完売。今まで漆を使わなかった業種へ漆の提案ができるようになり、新たな伝統保全の方法を見出す可能性を作っている。