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下の図は漆の生産量と輸入量を表した図です。国産漆も海外漆も共に減少しています。国産漆は現在1トンを切るほどの生産量となっており、日本の名前を背負ってきた漆器は海外漆に頼るような現状です。
なぜ漆が生産されなくなったのか?理由は簡単です。漆を使わなくなったからです。高価で扱いの難しい漆よりも安価で扱いやすい代用漆塗料が重宝されてきました。その漆風の塗料によって、本物の漆製品の違いが消費者に分からず、価格低迷化を招き伝統的な漆器産地そのものが衰退していってしまったからです。
漆の使用量は年々激減しています。使わなければ間違いなく消滅してしまうでしょう。そうなれば、縄文時代から続いてきた日本最大の文化の喪失を起こします。また、日本が世界に誇る文化財修復や保全にも影響してしまうことになります。
岩手県二戸市浄法寺町にて
岩手県二戸市に国内の80%の漆が取れる産地がある。そこで取れる漆は浄法寺漆と呼ばれています。漆の木は樹液が取れるようになるまで10年かかります。それまで下草を刈ったり、間引きをしたりして手間をかけて育てるのですが、一本の木から採取できる漆の量はたった200g。そう考えると漆って愛おしいね。だから漆は貴重。一滴、一滴漆掻き職人がすくうように集めるんです。
漆掻き職人が集めた漆がそのまま使えるわけじゃないです。漆の中の水分を熱で飛ばして精製する作業があります。桶の中にスクリューのように回る板で漆をかき混ぜます。温めながらかき混ぜるのですが、温めすぎてある一定の温度を越えてしまうと漆の成分が壊れてしまう。この出来で漆の良し悪しが決まるので大変な仕事です。こうやって漆塗りに使う漆が作られて、漆職人の手元に届くのです。
漆掻き職人も漆精製職人も減少しています。漆がどんどん使われるようにならなければ漆に携わる職人の減少は止められないでしょう。
愛知県名古屋市の漆精製所にて